インタビュー

起業・創業

ペット介護ステーション ジュエル
杉井ひとみさん

介護を必要とする一匹の犬との出会い

「介護を必要とする愛犬を飼っていた方が、遠方に住むご家族の容態が悪くなったため10日間ほど留守をすることに。
けれどもそのワンちゃんを預かってくれるところがなくて、盲導犬に関わる仕事をしていた私のところに声がかかりお世話をさせていただいたことが起業のきっかけです」と話す、杉井ひとみさん。

杉井さんは盲導犬候補の子犬を約1年間家族の一員として迎えて預かる[パピーウォーカー]をしていました。
そのつながりから盲導犬育成団体で長年事務の傍ら子犬から老犬までの育成サポートを務め、定年まで勤めました。
そんなご縁から、先述の犬を預かることになったのだとか。

この出来事をきっかけに、“介護を必要とするペットも安心して預けることができる施設の必要性”を感じ、2019年11月に「ペット介護ステーションジュエル」を開業。
約3年の月日をかけて起業の準備をしたと言います。

起業に向けての準備

まずペットケア専門士の資格を取るための勉強を始めました。日々の学習は通信講座で、そして月に一度大阪へスクーリングに通い、3級・2級・1級と高度な知識と技術を習得していきました。

それと同時に杉井さんは、徳島市内で開催されている「創業塾」や「起業塾」に通って、創業に必要な知識を学んできました。
徳島ニュービジネス協議会が主催する「エッグルーム」の起業家セミナーにも参加。こうした勉強会に参加することで、起業という志を同じくする仲間にも出会い、大きな励みとなったそう。
徳島ニュービジネス協議会が女性の起業支援で始めた「シンデレラストーリー」も、こうした起業仲間からの誘いで参加したと言います。

「シンデレラストーリー」は、協力者との出会いの場。
杉井さんは、頭の中に描いていたイメージを「事業プラン」として落とし込み、プレゼンテーションに備えました。
「ぼんやりとしていたイメージを人に聞いてもらえるようにビジネスプランとして言語化することで、自分がこれからやろうとしているビジネスが明確になってきました」と杉井さん。

無事、予選審査を通過。
自らのビジネスプランを多くの人の前で発表ました。
そして、見事創業前部門でグランプリを受賞。 副賞のドレスは「還暦だから赤いドレスを着よう」と深紅のドレスを選んで受賞パーティーの交流会に臨みました。

交流会に出席したのは、起業の支援団体の担当者や企業経営の第一線で活躍するニュービジネス協議会の会員など。 この時のプレゼンや受賞がきっかけで、こうした人たちに杉井さんの存在を知ってもらうことができ、支援団体のサポート体制が出来上がりました。 それが開業の大きな力になったと言います。

「苦労もすべて自分の糧」に。

杉井さんが創業して数ヶ月後にコロナウィルス感染症の流行が始まり、旅行などでペットの預かりを希望していた人たちの予約が軒並みキャンセルとなってしまいました。
11月の開業から少しずつ顧客を獲得していたにも変わらず、想像もしていなかった試練が新米経営者の杉井さんを襲います。
けれどもだからこそ、そんななか大切なペットを預けてくれたお客さんや動物のために誠心誠意のケアをしたと杉井さん。
そして「コロナのおかげで時間的な余裕ができて、良い勉強になったと今では心から思います」と、明るい笑顔で当時のことを振り返ります。

そうした杉井さんの真心のこもった対応はクチコミで広まり、さまざまな事情を抱えた飼い主たちが杉井さんを頼ってきています。

そして、ドッグトレーナーの資格を持つ息子の雄太郎さんも杉井さんと二人三脚で仕事をしています。奇しくもコロナ禍で新たに犬を飼う人が増え、犬のしつけを必要とする人たちからの依頼が引けを切らず来るようになり「事業の助けになってるんです」と、杉井さんは笑います。

「60歳を越しての起業ですが、私は100歳までにやりたいことがまだまだあるんです。人生一度きり。”やりたい”と思ったことは何歳からでもはじめられます。今が人生のなかで一番充実していて楽しいです」と、杉井さんは弾けるような笑顔を見せてくれました。

DATA

ペット介護ステーション ジュエル

〒770-8081
徳島県徳島市八万町弐丈53−3
TEL 088−678−6786
https://petcare-jewel.com/

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